筋膜は伸びるのでしょうか?

Gil Hedley博士のYoutubeレクチャーシリーズ(閲覧無料)日本語字幕付き

Does Fascia Stretch?: Learn Integral Anatomy with Gil Hedley

Youtubeに直接アクセスし、CCから日本語字幕を選択して下さい。

筋膜(ファシア)は伸びるかどうか。つまり筋膜をストレッチすることができるかどうかという議論があります。このレクチャーでは30年近く筋膜に重点を置いた解剖を行ってきたギル・ヘドレー先生が腸脛靱帯(ITバンド)の実際の映像を使って説明して下さいます。

Fasciaは日本語で筋膜と訳されているために、筋を取り巻く膜であるとの誤解がありますが、浅在筋膜(superficial fascia)は真皮の下側にある脂肪組織を含む疎性の結合組織を指します。ヘドレー先生の解剖ビデオ(無料:日本語字幕付き)を参照して下さい。誤解を避けるために「ファシア」という英語標記を主として使用します。

ファシアをストレッチすることができるという説も、ファシアをストレッチすることはできないという説もあり、どちらも自説を譲りません。

ファシアがストレッチするかどうかについて論ずる前に、ファシア(筋膜)とは何を指しているのか、ストレッチ(伸びる)とはどういう状態をさしているのかを考えてみましょう。

たとえば、コットン(綿)はストレッチするでしょうか。コットンの線維を1本手に取って引っ張ってもさほど伸びませんが、綿のTシャツは1本の繊維だけでできていいるわけではありません。

コラーゲン線維1本はファシアでしょうか。違いますね。ファシアは複数のコラーゲン線維と基質と細胞が組み合わさってできています。

私のシャツが綿の線維1本でできているのではなく、複数の綿の線維で織られてできているのと同じです。

綿の線維1本を引っ張ってもたいして伸びないかもしれませんが、綿のTシャツは引っ張るとかなり伸びますね。

それではファシア(筋膜)は伸びるのでしょうか?

ファシアがどのように伸びるかは、コラーゲン線維の「織り目」(weave)によります。また、引っ張る方向にも左右されます。

ギル・ヘドレー先生が「ペリファシア」(perifascia)と呼んでいる種類のファシアの線維はフエルト状の「織り目」で構成されおり、特定の方向に走っているのではないので、様々な方向に動くことができます。

ペリファシアとは周辺にあるファシアという意味で、体内で差動(隣合う構造がスライドするように動くこと)を可能にする接触面を構成する膜質のファシアです。ペリファシアについての詳細は別のレクチャーをごらん下さい。

日本語では筋周膜と呼ばれるものに当たると思います。隣接筋との間にある薄いフィルム状の層で、伸縮性があるため、筋は隣接する筋肉から独立して収縮することができます(differential movement)。滑性であるため、筋肉はスライドするように動きます。

ファシアの種類によってはよく伸びるものもあります。浅存筋膜(Superficial Fascia)/皮下筋膜はとてもよく伸びます。たとえば腕の皮下筋膜と真皮はつまみ上げることができますね。

深在筋膜(Deep Fascia)はどうでしょう。ディープファシアは密性結合組織の膜で、コラーゲン線維の密度が高く、規則正しく並んでいます。

最もよく知られているのが腸脛靱帯(ITバンド)ですね。これは太ももの外側にある分厚い筋膜で、長いコラーゲン線維が上下に走っています。横の方向にも線維は走っていますが、縦方向ほど密ではありません。このITバンドの「織り目」の上(浅)側と下(深)側には複数の線維束がさまさまな方向に走っています。

ITバンドは縦の方向に引っ張っても伸びません。筋肉を縦の方向に安定させているので、伸びたら大変なことになります。しかし、太ももの円周方向には伸びます。だから、大腿四頭筋が収縮して、盛り上がることができるのです。

縦の線維と線維の間の距離が広がることによって、横方向に伸びるのです。顕微鏡で拡大してもると、横のコラーゲン線維は直線ではなくアコーディオン状になっていることから、横方向に「伸びる」ことができるのです。

ギル・ヘドレー先生のビデオレクチャーの末尾には、実際のITバンドに負荷をかけて、線維の間隔が変わる様子を顕微鏡で撮影した画像が掲載されています。

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