私が選んだご献体「フランク」の解剖台には5人の実習生がつきました。私を含めた3人が統合解剖学アシスタント経験者であり、1名は解剖学研究所の関係者、解剖が初めての人は1人でした。解剖チームにより、メンバーの知見、経験、専門分野などから異なる経験が得られます。
SKIN-皮膚
レイヤーごとに解剖していく統合解剖学の1日目は皮膚の解剖です。皮膚は人体最大の器官であり、外の世界から身体を守るための最初の防護壁でもあります。また、外界との境界面であると同時に、接点でもあります。外科医でないかぎりは、このレイヤーを通してクライアントに語りかけることになります。

解剖実習室の隣の教室で参加者から施術を受けるJim Pulciani所長。参加者の多くが手技施術者なので、よくこのように施術の交換が行われています。施術者の能力は皮膚を通してどれだけ敏感に内部の構造を読み取るかに左右されます。
初めての解剖実習で、ご献体にメスを入れるのにためらったことを覚えています。確かに、皮膚に守られている完全な体にメスを入れることは、内側と外側の境界をなくす重大な行為かもしれません。メスを入れた瞬間に、テンセグリティを失った皮膚は二つに分かれ、「内側」への扉が開かれます。
ご献体の皮膚に初めてメスを入れる瞬間は一生に一度しかありませんので、はじめての方はこの瞬間を大切にしてください。
There is only one cut.
Dr. Gil Hedley
防腐処理を施していないご献体を解剖すると、血液が流れ出ることはないのか、という質問がよくありますが、心臓が動いていない、ということは圧がかかっておらず、ある程度凝固していること、また、この段階では血管が微細なので、血液が流れ出すということはありません。
一般に人体解剖のビデオを見ると、すでに見慣れた筋肉の構造が表面に出ている状態がほとんどです。最も外側にある表皮と筋肉組織の間にある構造が完全に無視されています。統合解剖学では、レイヤーとレイヤーの間の関係に焦点を当ているので、筋肉組織に到達するまでの過程に大きな時間を割きます。
皮膚の剖出では、表皮と真皮(この二つを分けて解剖するのは現実的ではありません)を皮下脂肪層(呼び方はいろいろです:adipose layer, subcutaneous layer, superficial fascia layer)から剖出します。真皮と皮下脂肪層は親密な関係にあるので、解剖実習で最も労力を要求される部分です。メス(scalpel)はすぐに鈍くなります。
肉眼では見えませんが、皮神経、動脈、静脈、筋繊維(立毛筋)そして線維構造が皮下脂肪層と真皮層を繋いでいるからです。体の部位により、密着度が異なったり、厚みが異なったりすることに気づくことも大切です。
私は1日目の終わりが肉体的に一番疲れますが、初めての方は興奮状態になって眠れないこともあるようです。1日の終わりのミーティングで精神的なケアについてのお話しがありました。
https://www.gilhedley.com/membership から無料のEasy Rider Membershipに登録すると、Gil Hedley先生の皮膚に関するレクチャーを視聴することができます。日本語字幕はついていませんので、英語のみです。
(つづく)
