5日目はいよいよ腹腔を開き腹部の内臓を観察します。Hedley先生がひとつの解剖台でデモンストレーションと説明を行います。腹壁を開くと、そこに大腸・小腸が見えると思われる方も多いと思いますが、まず出会うのは脂肪で綴られたレースのエプロンのような大網(greater omentum)です。
初めて大網を見た時には、正直言ってショックでしたが、その構造や役割を理解するに従って、美しいと思うようになりました。
大網の大きさや場所はご献体により様々で、テキストのイラスト通りのことはまずありません。Hedley先生によれば、疾患のある臓器を被うように移動し、炎症を抑えるなどの保護的役割を果たすそうです。そのお話しを聞き、何度も特定の臓器を集中して被うように移動している大網を観察すると、幼児を守るようにかけられた暖かい毛布のように感じるようになりました。これは、「内臓脂肪」ではなく、内臓にとって重要な役割を果たす器官なのです。
内臓ではしばしば変則(anomaly)や病変が観察されます。Hedley先生が今回デモンストレーションを行ったご献体では、結腸、特に横行結腸が極端に長く、骨盤の下の方まで降りていました。内臓の観察をすると思い知らされるのは、abdominal workと呼ばれる腹部臓器をターゲットとして行われる手技施術の際に、教科書通りの場所に内臓があると思ってはならない、ということです。
小腸は、単に腹腔の中に入っている管ではありません。約6mあると言われる小腸は腸間膜により腹膜後面に固定されています。この「茎」の部分を束ねて持つと、小腸は花束のようになります。空になっている小腸は薄く、小腸上から腰椎を感じることができ、腰椎がかなり前面にある構造だということが体感できます。
変則/病変としてよくあるのが、ヘルニアです。解剖中に胃が所定の位置に発見できず、騒ぎになっていました。胃が横隔膜を越えて完全に胸部に入っていることがあります。
胆嚢が手術で除去されている、女性の場合は子宮や卵巣が除去されていることがしばしばあります。また、子宮筋腫等が「筋腫」という名前から想像するものと全く違い、石灰化したミカン大のかたまりが体内に複数あるのを何度も見て、ショックを受けたこともあります。健康な臓器は美しいものですが、病変のある臓器は生理的に「何かおかしい」と感じます。肝臓で最も顕著に観察できます。脂肪肝や肝硬変、肝臓癌の病変を目の当たりにして、健康管理の重要性を思い知りました。
くり返しますが、健康な臓器は生理的に「美しい」と感じます。
Evisceration(内臓摘出)
内臓をin situ(もともとある場所)で観察した後、横隔膜よりも下の消化器系の内臓をひとつの構造として摘出します。
腹部内臓を摘出すると、腹部大動脈や大静脈、腰椎、骨盤内の筋の観察を行うことができます。内臓に関心のある生徒は、個々の内臓の観察や解剖を行います。
https://www.gilhedley.com/membership から無料のEasy Rider Membershipに登録すると、Gil Hedley先生の内臓に関するレクチャーを視聴することができます。日本語字幕はついていませんので、英語のみです。
内臓の解剖ビデオはYoutubeから日本語字幕つきで視聴できます。閲覧要注意です。
ヘドレー先生のYoutubeビデオは他サイトへのはめ込み禁止となっておりますので、Youtubeから直接ご覧下さい。年齢制限つきの閲覧注意ビデオです。
(つづく)