Fixed Cadaverについて

2024年5月の解剖実習ワークショップに申し込みました。2023年は防腐処理を施されていないご献体の10日間にわたる解剖実習ワークショップに参加しましたが、2024年は防腐処理を施されたご献体の6日間ワークショップを選択しました。参加を考えている方のために、防腐処理を施したご献体(fixed cadaver)についてお話しします。

Cadaver

日本語で死者の遺骸を表す言葉はいくつもありますが、ご献体は英語ではcadaverと呼ばれます。そのままの訳すと「死体」ですが、Hedley先生の解剖実習では、私達の学びのために献体して下さったdonor(献体者)と呼びますので、敬意と感謝の念を示すために「ご献体」と日本語に訳しています。

Fixedって何?

Fixedというのは、薬品による防腐処理を施されたご献体です。長期にわたる解剖実習を行う医学生が扱うのはhard fixedと呼ばれる強い防腐処理を施したご献体になります。Hedley先生の1週間のワークショップの場合は、soft fixedと呼ばれる比較的緩い薬品処理となります。

これに対して、Unfixedのご献体は低温保存したものであり、当然のことながら長期間の解剖には適さず、解剖実習中の温度管理に細心の注意を必要とします。

遺体の防腐処理はembalming(エンバーミング)と呼ばれ、アメリカでは葬儀屋で一般的に行われるものです。映画やドラマでエンバーミングを行っているシーンを目にしたことがあるかもしれません。原理としては、血液を除去し、防腐のための薬品を注入するものです。頸動脈や頸静脈、大腿動脈・静脈を引き出し、切れ目を入れてそこから薬剤を注入します。薬品の成分の比率等は、遺体整復師(エンバーマー)によって異なります。処置を行ったエンバーマーによって、ご献体の状態はかわります。

Fixed Cadaverの大きな特徴は、鎖骨の上の頸動脈が通る部分と、太ももの内側の大腿動脈が通る部分の切開したところを糸で縫い合わせていることです。初めてFixed Cadaverを見た人は、これを見て「?」という顔をすることがあります。このような、死後についたものは、artifact(死の所産)と呼ばれます。生きている間のその人とは全く関係ないものということです。

ほとんどのご献体で青あざのような鬱血色が観察されますが、死後のアーティファクトであることがほとんどです。

もうひとつ、注意しなければならないのは、防腐処理の薬品を体中に浸潤させるため、かなりな水分を含んでいることです。人工的にむくんだ状態になっています。

匂いは?

薬品の匂いがしますが、慣れたこともあってそれほど気にならなくなりました。初めての実習時にはマスクにエッセンシャルオイルを垂らしたりしていましたが、そのうち大部分の実習生はマスクをはずしてしまいます。呼吸器系の疾患のある方は、ハードコアなマスクをすることもあります。

UnfixedとFixed、どっちがいいの?

私はfixedとunfixedのいずれも何度も扱いました。ここしばらく、Hedley先生の長期プロジェクトのアシスタントをしている時以外は、unfixedの解剖実習を行っていました。

最近「unfixedでなければ解剖ではない」というような主張をしているワークショップが多くなっているとHedley先生は嘆かれています。どちらがいい、ということはありません。目的が何かによってどちらが適切かを選ぶということです。

Fixedは組織が「固定」されているので、一つ一つの構造を防出するのが容易です。特に、神経のようなデリケートな構造を剖出しようとすると、unfixedでは困難となります。脳の構造を観察したい場合も、unfixedでは柔らかすぎてはっきりと見ることはできません。

一方、fixedでは、関節が固定されており、「動き」を見るのには適しません。私は、unfixedの解剖時には、動きを重視して観察するようにしています。

どちらを選んでも、異なる気づきと学びを得ることができます。

2024年のワークショップの日程は以下のリンクから。

https://www.gilhedley.com/lab-course-details-and-schedule

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