心臓の螺旋をほどく:ギル・ヘドレー博士と統合解剖学を学ぶ

ギル・ヘドレー博士が、人間の心臓の渦巻く螺旋をほぐし、血液がその動きを活性化し、酸素のレベルを回復する場所である心臓の性質について考察しています。人間の解剖学について学びたい方や鼓動する心臓の神秘に触れたい方にとって、美しいビデオです!

Gil Hedley博士のYoutubeレクチャーシリーズ(閲覧無料)日本語字幕付

Integral Anatomy Heart: Unwinding the Heart Center, with Gil Hedley, Ph.D.

Youtubeに直接アクセスし、CCから日本語字幕を選択して下さい。ご献体の解剖映像(心臓のみ)が出ます。閲覧注意。

心臓は血液を全身に送るポンプだと習った覚えがあるのではありませんか。確かに鼓動する心臓の映像を見ると、ポンプの役割を果たしていることは間違いないかもしれません。

ベドレー先生は、ただ血液を加圧して送り出しているのではなく、心臓がらせん状に動くことにより血液に回転を与えていると考えています。

つながり/連続性に焦点を置く統合解剖学の観点から、ヘドレー先生は心臓と血管系をひとつながりになった「心臓の樹」(heart tree)と呼んでおり、臓器としての心臓はheart centerと呼んでいることに留意してください。

洗濯物のタオルを力一杯手で絞ると、ねじれてかたまりになったことはありませんか。心臓も同じ原理で形づくられている、という考え方があります。

ヘドレー先生のタオルを使ったデモンストレーションをごらんくだされば、おおまかな概念が理解できると思います。

次に、Anatomy from A to Z のご献体「Z」から剖出した心臓を使って、逆に螺/ねじりをほぐしていくデモンストレーションをお見せします。もちろん、心臓は解剖済みです。

くわしい原理を知りたい方は、David Geffen School of Medicine at UCLAによるビデオをYoutubeで見ることをお勧めします。3Dアニメーションや実際の心臓の鼓動する映像、心臓のほぐし方(unwinding)をステップバイステップで説明した映像等をごらんになれます。

実際に解剖実習を行うことによる気づきは、座学とは比べものにならない深さがあります。ヘドレー先生のAnatomy A to Zプロジェクトの映像はすべてGilhedley.comでメンバーになることによりアクセスすることができます。日本語字幕はまだついてませんが、非常に価値のある教材となると思います。

松果体と下垂体を結ぶ軸:ギル・ヘドレー博士と統合解剖学を学ぶ

このビデオでは、解剖実習での脳の解剖映像を使用して、松果体と下垂体の関係を明確に示します。

Gil Hedley博士のYoutubeレクチャーシリーズ(閲覧無料)日本語字幕付

The Pineal-Pituitary Axis: Learn Integral Anatomy with Gil Hedley

Youtubeに直接アクセスし、CCから日本語字幕を選択して下さい。ご献体の解剖映像(脳)が出ます。閲覧注意。

このビデオレクチャーではコロラドのInstitute for Anatomical Researchで実施されたばかりの解剖実習ワークショップの脳の解剖映像を使って、松果体と下垂体の位置関係について説明して下さいます。

松果体は睡眠ホルモンであるメラトニンを生成する重要な組織です。第3の眼とも呼ばれます。下垂体(脳下垂体)は数々の重要なホルモンを分泌する司令塔の役割を果たしています。これらの重要な内分泌器官がご自分の頭の中のどの位置にあるかご存じでしょうか。

松果体と脳下垂体の位置関係をin-situ(原位置)で見ることにより、自分の脳の中で松果体と脳下垂体を「感じる」ことができるかもしれません。ヘドレー先生の統合解剖学は内受容感覚(interception )を養うことを重視しています。解剖で学んだことを自分の体で感じてください。

解剖実習で頭蓋を正中矢状面で切断した映像が使われています。ヘドレー先生の解剖実習ではご献体を「もの」として扱わないように、ご献体に実習生が名前をつけ、「先生」としてあつかうように指導されます。解剖実習による学びは「先生」からの「贈り物」なのです。

このご献体は「Grandma Fenn」と名付けられています。映像では、前頭洞、鼻、鼻甲介、小脳の断面(生命の樹のように美しいです)、第4脳室、水管、第3脳室、その後ろに鎮座する松果体(黄色に着色)、中脳を通ってアークを描けば、乳頭体(緑に着色)に達します。視束交差の断面(青く着色)はトルコ鞍(sella turcica)があり、その中に下垂体(赤く着色)が座っています。

視束交差をつまんで動かすと、隣の視床下部の漏斗もいっしょに動き、つながっていることがわかります。

位置的には下垂体(hypophysis)は下にあり、松果体(epiphysis)は上にあります。hypoは下、epiは上を意味します。

自分の頭で感じる場合は、松果体は頭のてっぺんから真っ直ぐ下に下ろした線上にあり、下垂体は鼻梁の奧の方にあります。つまり松果体は下垂体よりも2センチほど高い位置にあり、4センチほど後方にあるのです。

小脳はサック(嚢)のようなものの中に入っています。松果体の後ろには隙間があり、脳脊髄液が松果体の回りを流れ、室間孔を通って側脳室に流れています。画像では側脳室は透明中核と脳梁の向こう側に隠れています。

ヘドレー先生のExplorer会員専用のコースAnatomy from A to Zのコース20では、脳に特化した解剖プロセスを見ることができます。サブスクしてみませんか?

実際に解剖実習を行うことによる気づきは、座学とは比べものにならない深さがあります。ヘドレー先生のAnatomy A to Zプロジェクトの映像はすべてGilhedley.comでメンバーになることによりアクセスすることができます。日本語字幕はまだついてませんが、非常に価値のある教材となると思います。

血液の骨盤:ギル・ヘドレー博士と統合解剖学を学ぶ

このビデオではイラストとモデルを使って「血液の骨盤」のコンセプトを説明します。これにより、心臓がどのように骨盤深部に係わっているかより深く理解することができます。

Gil Hedley博士のYoutubeレクチャーシリーズ(閲覧無料)日本語字幕付

Blood Pelvis: Learn Integral Anatomy with Gil Hedley

Youtubeに直接アクセスし、CCから日本語字幕を選択して下さ

このビデオレクチャーでヘドレー先生はイラストと模型を使って「血液の骨盤」のコンセプトを説明します。

ヘドレー先生は解剖学を始める前はロルファーとして手技療法を行われていました。手技施術者(マニュアルセラピスト)は常に人の体に触れていながら、医師ではないので、通常は解剖実習を行うことはありません。体に触れることにより治療を行うセラピストが、人体の内部に実際に触れる機会がないことに疑問を抱いた先生が、医師以外のマニュアルセラピストのために始められたのがIntegral Anatomy Workshopです。先生はロルファーとして早くから医大の解剖では無視されていたファシア(筋膜)に焦点を当てた解剖を行っていましたが、今ではファシア学会も設立され、メインストリームとなっています。

ブラッド・ペルビス(血液の骨盤)のコンセプトから、解剖学の本を使った座学と、自らの手で触れ、自らの体の中に感じることを重視するインテグラル・アナトミー(統合解剖学)の違いがわかると思います。

先生は、人体の構造に独特の名前を付けられますので、「Blood Pelvis」(血液の骨盤)というのは、ヘドレー先生のコンセプトによる用語ということになります。

ヘドレー先生は、心臓を血管系をすべて含めた「心臓の樹」ととらえ、臓器としての心臓は「Heart Center」(心臓の樹の中心)と考えられています。Heart Centerから枝分かれした動脈が末梢までめぐり、静脈を通してHeart Centerに戻ってくる一つの連続した臓器ととらえていることを念頭に置いて下さい。

心臓の樹の大な枝である腹部大動脈、下大静脈、そこからさらに分岐する総腸骨動脈、静脈、外腸骨動・静脈、内腸骨動・静脈は骨盤の深部に沿って通っており、これらをそのまま取り出すと、骨盤深部の形になっています。つまり、心臓の樹にも「骨盤」が存在するのです。

血管というと、それほど大きなものではないように思う方もいるかもしれませんが、Blood Pelvisを形成する血管はずっしりと存在感のあるものです。大腰筋の施術をすれば、Blood Pelvisすなわち心臓の樹にも影響を与えているかもしれません。

骨盤施術の際に、「血液の骨盤」を念頭に置くと違ったアプローチがあるかもしれません。

静かに仰向けに横たわり、臍のすぐ左、大腰筋のすぐ内側に手を差し込むと、腹部大動脈の拍動を感じることができます。そこから、Blood Pelvisを頭に描いて見て下さい。

実際に解剖実習を行うことによる気づきは、座学とは比べものにならない深さがあります。ヘドレー先生のAnatomy A to Zプロジェクトの映像はすべてGilhedley.comでメンバーになることによりアクセスすることができます。日本語字幕はまだついてませんが、非常に価値のある教材となると思います。

外反母趾:ギル・ヘドレー博士と統合解剖学を学ぶ

このビデオレクチャーでヘドレー先生はAnatomy A to Zプロジェクトの解剖過程で剖出したご献体2体の両足の骨を並べて、外反母趾について説明してくださいます。中足骨から趾節骨までを、靱帯を残した時点でまずお見せし、次に靱帯を除去したものをお見せします。

Gil Hedley博士のYoutubeレクチャーシリーズ(閲覧無料)日本語字幕付

Bunions: Learn Integral Anatomy with Gil Hedley

Youtubeに直接アクセスし、CCから日本語字幕を選択して下さい。(閲覧注意)

このビデオレクチャーでは実際のご献体の骨の映像が使われていますので、苦手な方は避けて下さい。

このビデオレクチャーでヘドレー先生はAnatomy A to Zプロジェクトの解剖過程で剖出したご献体2体の両足の骨を並べて、外反母趾について説明してくださいます。

中足骨から趾節骨までを、靱帯を残した時点でまずお見せし、次に靱帯を除去したものをお見せします。

私は解剖実習の際に、足根骨をばらばらにしてしまい、二度ともとにもどせなかったことがあります。解剖の際はまず、靱帯を残したまま、どのようにつながっているかを観察してください。最初の映像では中足骨をばらばらにしないように足根骨の楔状骨は残されています。

ご献体「アンナ」とご献体「Z」の骨を隣り合わせに並べると、人間の骨には大きなバリエーションがあることがわかります。プラスチックの人体骨格モデルでは知り得ないバリエーションです。

外反母趾(英語では親指の付け根が飛び出している部分をBunionと呼ぶようです)については皆さんよくご存じで、外反母趾のある足のX線写真もよく見られると思います。実際に骨はどうなっているのでしょうか。

「アンナ」の両方の母趾には外反母趾が見られ、母趾の中足骨と第1基節骨(親指)の角度がくの字状になっていますね。第1中足趾節関節の靱帯が内側では長く、外側では短くなっていることに注目して下さい。「アンナ」の経験に適応して靱帯の長さが変化したのです。関節の軟骨も変形しています。

わたしは、プロジェクトの解剖の最初の3ヶ月助手をしていましたが、ご献体「アンナ」に会って、その日に皆が気づいたのは、第2趾が欠損していることでした。肉眼解剖学の解剖は、病理をうんぬんするものではありませんので、多分…だろう、としか言えませんが、何体も解剖しているといろいろなケースに遭遇します。

おそらく先の細いハイヒールを履いていたために第2趾の下に母趾がもぐる等で痛みが生じたために切除したのでしょう。

靱帯を取り除いた後の映像では、「アンナ」の第1基節骨が外反母趾に適応して変形しており、中足骨と基節骨をまっすぐにならべても、かみあわなくなっていることがわかります。まがったものを伸ばせばいい、という問題ではないのがよくわかります。

靱帯を除去した「アンナ」の骨を並べてみると、先細のハイヒールの形になっているのがよくわかります。私は個人的に先細ハイヒールは現代版纏足だと思っています。足の指の動きが制約されると、全身に影響が及びます。

実際に解剖実習を行うことによる気づきは、座学とは比べものにならない深さがあります。ヘドレー先生のAnatomy A to Zプロジェクトの映像はすべてGilhedley.comでメンバーになることによりアクセスすることができます。日本語字幕はまだついてませんが、非常に価値のある教材となると思います。

静脈と動脈:ギル・ヘドレー博士と統合解剖学を学ぶ

このビデオレクチャーでヘドレー先生は解剖プロジェクトのビデオ映像をシェアし、動脈と静脈の違いについてお話しして下さいます。テクスチャーの違いに注目して下さい。

Gil Hedley博士のYoutubeレクチャーシリーズ(閲覧無料)日本語字幕付き

Vein and Artery: Learn Integral Anatomy with Gil Hedley

Youtubeに直接アクセスし、CCから日本語字幕を選択して下さい。(閲覧注意)

このビデオレクチャーでは実際のご献体の解剖映像が使われていますので、苦手な方は避けて下さい。

このビデオレクチャーでヘドレー先生は解剖プロジェクトのビデオ映像をシェアし、動脈と静脈の違いについてお話しして下さいます。テクスチャーの違いに注目して下さい。

動脈と静脈の違いは皆さんご存じだと思います。人体解剖図では通常動脈は赤、静脈は青で描かれています。

実際のご献体の解剖では、このように色分けされているわけではありません。 まず、神経血管束(neurvascular bundle)という概念を念頭に置く必要があります。神経・動脈・静脈はしばしば束になっており、その周囲を脂肪がクッションのように包んでいます。皮下脂肪層以外に体内に脂肪を見つけたときには、保護する必要のある大事な組織がその中にある可能性を考慮する必要があります。

最初に解剖実習に参加した時には、神経、動脈、静脈、(そして裂けたファシアが索状になったもの)の区別が付きませんでした。座学でそれぞれの役割は知っていても、現物を目の前にすると知識と現実が一致しなかったのです。

何度か解剖を繰り返すうちに、テクスチャーの違いが分かるようになりました。手で触れた時の触感や、引っ張ったときの張力の感じ、厚み等です。これは、バーチャル解剖では決して会得できない感覚でした。テクスチャーによる違いが分かれば、その違いはどのような役割の違いを反映したものかが理解できるようになります。

オノマトペで表現すると「動脈はボインボイン、静脈はフニャフニャでペランペラン、神経はピンピン筋っぽい」という感じでしょうか。

このビデオではご献体「キャプテン」の鼠径靱帯、縫工筋、長内転筋に囲まれた大腿三角が美しく剖出されています。神経血管系を取り巻く脂肪組織はすでに取り除かれているので、大腿神経、大腿動脈、大腿静脈をはっきりと見ることができます。

ついでですが、普段の解剖では「無視」される大腿を走る皮神経(cutaneous nerve)ですが、「キャプテン」の解剖プロジェクトは神経系の剖出を目的としていることから、きれいに残されているのを見て下さい。レアものの映像です。

クローズアップでは大腿動脈に血液を循環させる小さな動脈と静脈が見えます。動脈は筋線維でできており、それ自体に血液を供給する血管系が必要なのです。静脈にもありますが、小さすぎて肉眼解剖学では見ることはできません。

血管系や心臓中心のより詳細な映像は「解剖学AからZへ」コースの#16や、マーガレット解剖シリーズのコースの5日目などで詳しく学ぶことができます。これらはGilhedley.comサイトのエクスプローラーメンバーシップに含まれていますので、ぜひご覧ください。

腸脛靱帯とフォームローリング:ギル・ヘドレーと統合解剖学を学ぶ

このビデオレクチャーでヘドレー先生はAnatomy A to Z(2o20-2021)の解剖プロジェクトのビデオ映像をシェアし、腸脛靱帯(ITB)が人体の構造上果たす役割についてお話しして下さいます。

大腿筋膜(深筋膜)、腸脛靱帯、ペリファシア、大腿の筋の関係をご献体で説明した後、腸脛靱帯が持つ感知器官としての役割と、「筋膜リリース」の一種とされているフォームローリングが及ぼす影響に焦点を当てたレクチャーとなっています。

Gil Hedley博士のYoutubeレクチャーシリーズ(閲覧無料)日本語字幕付き

Foam Rolling: The IT Band Speech: Learn Integral Anatomy with Gil Hedley

Youtubeに直接アクセスし、CCから日本語字幕を選択して下さい。(閲覧注意)

このビデオレクチャーでは実際のご献体の解剖映像が使われていますので、苦手な方は避けて下さい。

このビデオレクチャーでヘドレー先生はAnatomy A to Z(2o20-2021)の解剖プロジェクトのビデオ映像をシェアし、腸脛靱帯(ITB)が人体の構造上果たす役割についてお話しして下さいます。

大腿筋膜(深筋膜)、腸脛靱帯、ペリファシア、大腿の筋の関係をご献体で説明した後、腸脛靱帯が持つ感知器官としての役割と、「筋膜リリース」の一種とされているフォームローリングが及ぼす影響に焦点を当てたレクチャーとなっています。

ボディワークの世界では、常に特定の筋や構造が「諸悪の根源」として注目を浴びます。大腰筋、腰方形筋、梨状筋が取り上げられてきました。一時期、誰もが大腰筋について語っていたことがありますね。腸脛靱帯もそのひとつです。

スポーツジムに行くと、必ずと言っていいほどフォームローラーを使って腸脛靱帯(ITB)をコロコロとローリングしている人が見られます。腸脛靱帯が硬いから、ほぐしているらしいのですが、実際に体の中で何が起こっているのでしょう?ローリングには腸脛靱帯を「リリース」する効果があるのでしょうか。

そもそも、腸脛靱帯(Iliotibial Band/Iliotibial Tract)とはどのような組織なのでしょうか?皆さんがお馴染みの人体解剖図では、大腿の外側を上下に走る白いストラップのような組織として描かれていますね。ズボンのサイドラインストライプのような組織です。

大腿は大腿筋膜(fascia lata)と呼ばれる深筋膜でラッピングされています。大腿筋膜は腸骨稜まで続いており、中臀筋や大腿筋膜張筋(TFL:Tensor Fascia Lata)も被っています。この連続した大腿筋膜の一部が肥厚化した部分が腸脛靱帯と呼ばれていますが、独立した構造ではありません。

同時に、腸脛靱帯は構造上独特の特性を持っています。ビデオでは緻密(dense)で規則正しく(regular)線維性(fibrous)の組織であり、複数の方向に90度の角度で格子状の線維が走り、これが複数の層となっていることがわかります(詳細はDoes Fascia Stretch?のビデオを参照下さい)。それぞれの層はお互いに付着しています。

腸脛靱帯は非常に強靱な組織であり、人体の構造上の重要な要素です。ヘドレー先生はこれをエクソスケルトン(外骨格)と呼んでおり、もしこれが緩まってしまうと、立っていられなくなると指摘しています。腸脛靱帯は構造上ぴんと張っていなければ成らないのです。

腸脛靱帯のもうひとつの特性は、感覚器官としての役割です。無数の感覚自由神経終末(sensory free nerve endings)が腸脛靱帯に存在することにお気づきでしょうか。ファシアに自由神経終末があることにより固有受容感覚(proprioception)が働いています。私たちはファシアに痛みを感じるのです。

ファシアにかかる張力のバランスがずれていることを脳が痛みとして認知するのかもしれません。

さて、フォームローリングですが、私の友人は「腸脛靱帯がタイトだ」と言って、青あざができるまでローリングしていましたが、何の効果もなく、常に膝の痛みを訴えていました。何が起こっているのでしょう。

筋肉を大きくするためのボディービルディングのトレーニングでは筋肉を微細に傷つけることにより、修復される際にさらに大きくなることを目的としているため、「痛み無くして得るものなし」というメンタリティが通用するかもしれませんが、筋膜をリリースしようとして痛みが出るのは本末転倒ではないでしょうか。

ヘドレー先生は、痛みが出るまでローリングすることにより炎症が生じ、組織が癒着してさらにタイトになり、痛みが生じ、それをほぐそうとしてさらにローリングすることにより、炎症が起こり…という負の連鎖に入る危険性を指摘されています。

それでは、フォームローリングは何の効果もないのでしょうか?

もう一度、ご献体を見てみましょう。深筋膜(ディープファシア)/腸脛靱帯の下側には水分を含んだ薄膜組織(ペリファシア)があり、これが筋肉と深筋膜の間の差異運動(differential movement)を円滑化しています。解剖画像では腸脛靱帯はペリファシアから剥離されていますが、生きている人体では、腸脛靱帯とペリファシアの間に空間はありません。

差異運動はシアリング(Shearing)ムーブメントと表現されることもあります。力まかせのローリングではなく優しくシアリングすることにより、動きが鈍くなっているペリファシア層に水分が補給され、痛みが軽減し、動きが円滑化すると考えられます。

このコンセプトに基づいたフォームローラーによる筋膜リリースのメソッドのひとつとして、スー・ヒッツマン氏のメルト・メソッドがあります。(私もこのローラーを使ってます。)

また、片側の筋が硬いのは、反対側の筋が弱いからかもしれません。つまり、タイトな側を緩めるのではなく、弱い側を強化する必要があるのかもしれません。

複雑な構造を理解したうえで、どの層、どの構造に働きかけているのかを意識することが大事なのではないでしょうか。

この解剖ビデオの撮影時に、私は解剖助手として立ち合っていました。実際に解剖実習を行うことによる気づきは、座学とは比べものにならない深さがあります。ヘドレー先生のAnatomy A to Zプロジェクトの映像はすべてGilhedley.comでメンバーになることによりアクセスすることができます。日本語字幕はまだついてませんが、非常に価値のある教材となると思います。