解剖学研究所の第1回オンラインサミット開催

Gil Hedley先生のホームベースであるコロラド州の解剖学研究所Institute for Anatomical Researchが2024年5月24-26日の3日間にわたり、オンラインサミットを開催します。英語のみですが、ファシア関係の研究で著名な先生方や、ファシアをボディワークに取り入れて独自のシステムを開発し、世界的に有名な方が数多く出席されますので、英語が分かる方には、ファシア研究をめぐる最新の動向をキャッチするのに最適の機会と思います。

参加費は1日25ドルからで、収益は非営利団体である研究所の設備投資や運営に充てられます。ぜひご協力下さい。

下のスピーカー以外にも、著名な方が次々と参加を表明して下さっています。スピーカーの多くはファシア学会に関与されている方々なので、ファシアに興味のある方にとっては1度に皆さんのお話を聞いて、今欧米で何が起こっているかを知る絶好の機会になると思います。

申し込みは:https://www.anatomicalresearch.org/events/online-anatomy-summit-fundraising-event-2024-05-26-10-00 から。

ゲストスピーカー:個人的に知っている方と実習中によく名前をきく方のみ日本語で説明します。

正式なプロフィールは以下のウェブサイト(英語のみ)で見てください。

https://www.anatomicalresearch.org/about-5

https://www.anatomicalresearch.org/copy-of-friday-guest-speakers

https://www.anatomicalresearch.org/copy-of-saturday-guest-speakers

Bonnie Thompson
コロラド解剖学研究所の創設者であるボニー・トンプソン先生はマッサージセラピストとして1994年にGil Hedley 先生の解剖実習ワークショップを受講して以来、ボディワーカーもアクセスできる解剖研究施設の必要性を感じ、非営利のコロラド解剖学研究所を創設しました。何度もお会いしましたが、パワフルで解剖学教育に情熱を持たれている方です。

Joe Phee
ジョー・フィー先生は日本でも有名な陰ヨガのインストラクター講座を世界中で開いています。彼女は中国医学の知識と、西洋の解剖学の知識を組み合わせたヨガプラクティスを実践されています。Gil Hedley先生の解剖実習ワークショップの常連として、何度もお会いしましたが、知識を得ることへの情熱にあふれた方です

Lauri Nemetz
ローリ・ネメツ先生は複数の大学で解剖学の教鞭をとっており、最近ファシアと運動についての著書も出版されています。ドイツのグーベンで行われたファシア・ネット・プラスティネーションプロジェクトにも関与し、独自の解剖実習ワークショップも主催されています。Hedley先生のワークショップで何度かお会いしましたが、素晴らしい解剖の技術です。日本人の生徒向け解剖実習を指導した経験もあります。

Leslie Kaminoff
レスリー・カミノフ先生は世界的に著名なヨガ指導者で、世界中でワークショップを行われています。日本語でも出版されているヨガ解剖学の本の著者でもあります。カミノフ先生はヨガと呼吸ついての深い洞察を持たれており、非営利のブリージング(呼吸)・プロジェクトの創設者でもあります。カミノフ先生はネメツ先生といっしょにヨガに焦点を当てた解剖実習ワークショップを実施されています。Hedley先生の解剖実習ワークショップで何度もお会いしましたが、かなりな日本通です。

Carla Stecco
カーラ・ステッコ先生は、ヨーロッパのファシア研究の第一人者であり、日本のファシア研究でも彼女の研究がしばしば引用されています。主にヨーロッパで解剖ワークショップを実施されております。

Dr. Joe Muscolino
ジョー・マスコリーノ先生は手技施術者のためのオンライン教育コースを構築されており、ひとつひとつの筋について、イラスト、実際の解剖画像、モデルを使って包括的な情報を提供されています。私はオンラインコースの日本語字幕作成を担当していますが、非常に緻密で正確な指導をされています。著書も多数あり、世界各国でワークショップを開催されています。

Dr. Madhav Gramke
マダブ・グラムケ先生はGil Hedley先生に師事するためにコロラドに移住されました。私は共にA2Zプロジェクトと神経解剖プロジェクトに参加し、ご自身の解剖実習ワークショップも開催されています。背骨のアナトミーに非常に詳しく、素晴らしい知見を持たれています。

Jim Pulciani
ジム・プルチアーニ先生は解剖研究所の所長で、鍼灸師でもあります。先生の解剖スキルには素晴らしいものがあります。東洋医学と西洋医学の両方の視点から、施術を行われています。朗らかな人柄で、研究所をささえています。

Rachel Scott
レイチェル・スコット先生はヨガインストラクターの教育コースを作成している、いわばヨガの先生の先生の先生で、解剖学的知識に基づいたヨガ指導をされています。私は、スコット先生のヨガ教師指導用教材の日本語翻訳を担当してますが、自分のヨガが格段に上達しました。

Hedley先生の北米111都市神経系解剖研究プレゼンテーションツアー

現在Gil Hedley先生はアメリカとカナダの111都市を回りながら、2023年に実施した神経系解剖のプレゼンテーションを行っています。このプレゼンテーションは医師はもちろん、手技施術を行うすべてのプロフェッショナル、ヨガ、ピラティス等のインストラクターを対象としており、免許更新のための条件となるContinuing Educationの単位も取得できます。さらに、「身体を所有しているすべての人」にお勧めです。

わたしは2023年の3月末に1週間神経解剖プロジェクトのお手伝いに参加しましたが、目からウロコが落ちる体験でした。ちょうど迷走神経を心臓から肺までたどっている段階でした。

円安の時代なので、渡米してまで参加されるのは難しいかもしれませんが、いつか機会があれば、ヘドレー先生を日本に招待して、日本でプレゼンテーションをする機会をセッティングしていただける方がいらっしゃることを切に望んでおります。

神経系の実際の解剖フッテージというのはなかなか見つかりません。また複雑な神経叢については、ダイアグラム化した図はお馴染みですが、実際の人体のイメージはそれほど多くありません。

Hedley先生のプレゼンテーションでは解剖の過程で次の神経がカメラで撮影されています。

  • 髄膜、脳神経
  • 皮神経
  • 自律神経の複雑な分岐
  • 神経叢とその神経節
  • 迷走神経の経路全体
  • 尾骨までの交換神経幹
  • 頸神経叢
  • 上腕神経叢
  • 腰神経叢
  • 仙骨神経叢

見てみたいと思いませんか?

ツアーについてはhttps://www.gilhedley.com

2018年ファシア学会会議(ベルリン)でのプレゼンテーション

2018年にベルリンで開催された第5回国際ファシア学会会議(Fifth International Fascia Research Congress)で発表されたプレゼンテーションビデオです。ギル・ヘドレー博士が、「ファズ」(Fuzz)と呼んでいたファシアとは何かについて説き明かします。まず、皮下脂肪層、そして疎性結合組織を示し、いずれも、2015年ファシア学会会議で提案された定義に適合するファシアとして実証することができることを示します。一般に疎性結合組織と考えられている組織の名前として、表層ファシア(Superficial fascia)とペリファシア(perifascia)を提案します。

Fascia is all around us! (for 2018 Fascia Congress, Berlin): Learn Integral Anatomy with Gil Hedley

ビデオの埋め込みが禁止されていますので、リンクから直接Youtubeにアクセスし、CCで日本語を選んで閲覧ください。

Fasciaという英語は日本語では筋膜と訳されているようですが、Hedley先生の統合解剖学の観点からここでは「ファシア」とカタカナ表記することにします。

このプレゼンテーションビデオでは、真皮の下にあるsuperficial fascia(浅層ファシア)と、Hedley先生が提唱するperifascia(ペリファシア)の性質が明示されています。

Hedley先生はまだファシアが注目されていなかった2005年に、ご献体で観察されたある構造を「Fuzz」と表現したスピーチのビデオを作成し、その後、Youtubeに投稿し、以来「Fuzz speech guy」として当時は数少なかったファシアを意識する研究者やマニュアルセラピストの間で有名になってました。以来、”fuzz”の正体の研究を重ねた結果、現在ではペリファシアと呼び、その特性からこれがファシアの定義に適合するものであるとされています。

Hedley先生はFuzzスピーチの情報をアップデートし、次のように説明しています。

「毛羽立ち(Fuzz)」は、実際には生体内の非常に湿った膜であり、私は現在「ペリファシア」と呼び、解剖学者は一般に疎性結合組織(loose areolar connective tissue)と呼んでいるものです。 私がこれをファシアと呼んで妥当であると考えるのは、それが結合組織の集合体であり、覆い、包み込み、シート状に剖出することができるためです。シート状に切り出すのは容易であり、私も他の多くのビデオでも行っています。 解剖時に引き裂くと「毛羽立った」ように見えるのは、それを構成するコラーゲン線維の組織が直線的ではなく「フェルト状」に組織されているためで、非生理的張力がかかると綿菓子ように毛羽だちます。 これらの組織は、筋骨格系の中で特に差異運動(differential movement)が発生する場所に存在します。 これらは滑りやすく湿っており、膨張性と弾力性があるため、これらの膜を介して関係する他の組織(筋束など)が作用し、相互に簡単に移動できます。 感覚神経終末もこれらの組織で終結しており、これらの滑りやすい経路を通って他の目的地に向かう多くの神経も存在します。 したがって、ペリファシア膜組織が静止状態、脱水状態、虚血状態、および/または炎症を起こしている場合、実際にそこが痛みの原因となる可能性があります。 私は、「What’s the Fuzz?! The role of Fascia in Healthy Movement」という一連のビデオで、研究室の画像や映像を使ってこれらの組織について詳しく議論し、説明しています。このビデオは私のウェブサイトで(https://www.gilhedley.com/products/what-s-the-fuzz-5-hr-ce-credit-course)見つけることができ、視聴できます。 イージーライダー会員(無料)に登録し、楽しんでください!

Gil Hedley, Ph.D.

浅層ファシア:Superficial fascia

Fascia is all round us!のビデオはまず、浅層ファシア(superficial fascia)の性質のデモンストレーションから始まります。浅層ファシアは密性結合組織である真皮(dermis)と筋肉の間にある層であり、皮下脂肪層のことです。人体解剖図やビデオでは皮下脂肪層に焦点が当てられることは希であり、その存在はしばしば悪者や排除すべきものとして扱われており、これまで皮下脂肪層が果たす重要な役割や機能について言及されることはまれでした。

美容整形で脂肪吸引という施術を聞いたことがあると思います。この言葉からは、単に皮膚の下の脂肪の塊を吸い取る、というイメージが想起されます。現実はどうなのでしょうか。

このビデオでは、ご献体から皮下脂肪/浅層ファシア片を剖出し、脂肪分を除去することにより、脂肪細胞を支えているマトリックス(骨組み/基盤)のみを取り出し、荷重をかけてその引っ張り強度をデモンストレーションしています。

医大のご献体処理室におけるワークショップで、実験用の特別な装備がなかったため、かなり原始的な方法でデモンストレーションされていることをご了解下さい。

この試みが行われた時に私は解剖助手として立ち合っていましたが、マニュアルセラピストとして皮下脂肪を見る観点が大きく変わりました。

ペリファシア:Perifascia

Peri=周辺、周囲 Perifasia=ファシアの周辺の組織

(3:31)Hedley先生がペリファシアと命名した組織についてのデモンストレーションが行われます。これは、初期のビデオで先生がFuzzと呼んでいた、筋組織と表層ファシアの間に存在する構造です。この構造は非常に薄く、透明であるため、容易に見逃されてしまいます。ペリファシアは表層ファシアの下だけでなく、筋組織の間にも存在します。

ペリファシアは時間をかければファブリック(膜)として剖出することができますが、組織が乾燥している場合は、引っ張ると裂けて毛羽だって見えます(Fuzz)。光が波動であり同時に粒子であるという概念と似ていますね。

先に表層ファシアの強靱性をデモンストレーションしましたが、このデリケートなペリファシアも特性的な耐久性を持っています。ペリファシアは水分を多く含んでおり、組織間の滑りをよくする働きをしています。

それでは、ペリファシアの層はいくつあるのでしょうか。実際のところ、人体は層にわかれているわけではなく、層(レイヤー)は使用する器具と技術により決まります。深層ファシアとペリファシアは連続しており、これをテクスチャーの違いに基づいて分離することにより、層として見ることができるのです。