二頭筋の再マッピング:ギル・ヘドレーと統合解剖学を学ぶ

このビデオレクチャーでは、ギル・ヘドレー先生が大腿二頭筋と上腕二頭筋について説明しています。

Gil Hedley博士のYoutubeレクチャーシリーズ(閲覧無料)日本語字幕付き

Re-Mapping Biceps: Learn Integral Anatomy with Gil Hedley

Youtubeに直接アクセスし、CCから日本語字幕を選択して下さい。(閲覧注意)

このビデオレクチャーでは実際のご献体の解剖映像が使われていますので、苦手な方は避けて下さい。

数多くの解剖実習の現場に立ち合いましたが、ギル・ヘドレー先生のワークショップではしばしばパラダイムシフトが起こります。実習生の大部分は座学で教科書の人体解剖図から得た知識を目の前にあるご献体に適用しようとしますが、先生は、「どちらが先にあったのか」と問いかけ、「最高のテキストブックは今目の前にあるご献体です」と固定観念を一旦捨てるように勧めます。

多くのご献体を解剖していると、アノマリー(変則)のないものはない、ということを学びます。人体解剖図は学びやすくするために「平均的」な組織構造を示したものであり、人体解剖図通りの個体は存在しないのです。

筋肉組織の名称も、過去に誰かが名付けたものに過ぎず、実際の人体における現実と矛盾する場合があります。テキストブックで学ぶ組織の名称は、山歩きをする際に道に迷わないようにするための便利な地図に過ぎないのです。必要ですが、それは今、目の前にある現実の山とは別物なのです。

このビデオレクチャーでヘドレー先生は「二頭筋」という名称と現実の組織の構造の乖離を指摘することにより、パラダイムシフトを促しています。これは実際に解剖を行ってこそ理解できる視点だと思います。

上腕二頭筋と大腿二頭筋は誰でも知っている有名な筋肉でしょう。二頭筋は2つの筋組織をペアにしています。二頭筋という言葉から起始-停止(Gil Hedley先生もJoe Muscolino先生も起始-停止という言葉を避けられますが、ここではわかりやすくするためにこの言葉を使わせていただきます)がV字状になっている筋という印象を受けると思います。

しかし、実際に解剖してみると上腕でも大腿でも二頭筋を含む3つの筋組織がN字状になっていることがわかります。そこでヘドレー先生は3つの筋組織をあわせて「N字状筋」と呼んでいます。

大腿では大腿二頭筋の長頭と短頭に半腱様筋が加わります。長頭と半腱様筋の近位の腱は、長頭と短頭の遠位の腱と同じくらい密接に融合しています。長頭と短頭は大腿二頭筋としてペアリングされるのに、同じように融合している半腱様筋はなぜ参加できないのか?実際の人体では「二頭」ではなく「三つ子」の筋ではないでしょうか。

上腕では上腕二頭筋の長頭と短頭に烏口腕筋が加わります。短頭と烏口腕筋の近位の腱は、短頭と長頭の遠位の腱と同じくらい密接に融合しているのにもかかわらず、ペアリングされていません。

ヘドレー先生がもうひとつ指摘する点は、大腿と上腕で、同じN字状の筋組織パターンが見られるのに、二頭筋としてペアリングされている筋組織が異なる点です。名称の付け方は恣意的である、ということです。

この点については、ヘドレー先生がホワイトボードで色分けして図解されています。

ビデオではご献体から剖出した「N字状筋」を並べて表示しています。この点を詳しくごらんに成りたい方はGilhedley.comの会員になることにより、実際に解剖されている場面を見ることができます。

驚くべき肋間筋

このビデオレクチャーでは、ギル・ヘドレー先生が実際のご献体で剖出された外肋間筋と、内肋間筋を説明して下さいます。

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Your Amazing Intercostal Muscles – Anatomy with Gil Hedley

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このビデオレクチャーでは実際のご献体の解剖映像が使われていますので、苦手な方は避けて下さい。

施術時に肋間筋を意識したことがあるでしょうか。筋肉、腱、筋膜等の軟組織に焦点を当てたセラピストは肋間筋を意識することはあまりないと思います。

肋間筋を見たことがあるでしょうか?人体解剖ビデオを見ても専門医でない限り、肋間筋に注意を払う方は少ないのではないでしょうか。

このビデオレクチャーでは、ギル・ヘドレー先生が実際のご献体で剖出された外肋間筋と、内肋間筋を説明して下さいます。先生は外肋間筋と内肋間筋の間にペリファシア(間質筋膜?)が存在し、差動(differential movement)を許していることを指摘されています。

インテグラル・アナトミーの1週間または10日の解剖実習コースでは、鎖骨を外した後、肋骨を両脇で切断し、胸郭の前面をはずして、胸腔内を観察するというプロセスを取ることが多く、外肋間筋だけを剖出し、内肋間筋との線維方向の違いを詳細に見るということはあまりありません。

(話しは逸れますが、胸郭の前面を内側から見たことがあるでしょうか。何度見ても美しいものです。)

ギル・ヘドレー先生は完全な胸郭を手で押すことにより、呼気の胸郭の動きを再現し、手を離すと自然なリバウンドにより、胸郭が膨らみ、空気が肺に入る(吸気)様子をデモンストレーションしてくださいます。これが、モデル(二次元でも三次元でも)を使った学びと実際のご献体を使った解剖実習の学びの違いと言えるのではないでしょうか。

肺自体の動きは、Exquisite Lungs Breathing: Learn Integral Anatomy with Gil Hedley でごらん下さい。(字幕は付いておりませんがビジュアルのみで十分かと思います。)

ヘドレー先生は解剖のプロセスを詳細に記録したビデオをアーカイブ化しています。www.gilhedley.comで会員登録(有料:月額15ドル)してください。

腕神経叢—首を大事に:ギル・ヘドレーと学ぶ統合解剖学

このビデオでは、ギル・ヘドレー先生が首の神経・血管と周囲の筋肉の複雑な関係を紹介しています。マニュアルセラピストやボディワーカー(または首に興味のある人)には必見の内容であり、この短いレッスンを通じて腕神経叢の驚くべき構造と周囲の関係を理解することができます。

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Brachial Plexus – Respect Your Neck: Learn Integral Anatomy with Gil Hedley

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このビデオレクチャーでは実際のご献体の解剖映像が使われていますので、苦手な方は避けて下さい。

ギル・ヘドレー先生は人体に関心を持ち、ロルファーの資格を取得されていますので、しばしばマニュアルセラピストの視点から解剖学を説明して下さいます。

このビデオレクチャーをごらんになる前に、ヘドレー先生独特の言葉の使い方を少し説明したいと思います。先生は解剖学者であると同時に、詩人、哲学者でもありますので、詩的な用語を使って解剖学をわかりやすく説明して下さることがしばしばあります。

タマネギ+樹モデル

先生は人体を説明する時に、Onion-Tree Modelというコンセプトを使われます。これは人体がタマネギのように層になっており、先生の解剖実習では、この層(レイヤー)をひとつの全体的構造として一枚一枚剖出していくという過程が行われます。

しかし、タマネギの層には中心から樹木のように神経、血管、リンパ管等が表面まで伸びています。先生はタマネギの層と枝を伸ばす樹木の両方のイメージを組み合わせたコンセプトで人体を説明しています。

このビデオレクチャーでは先生は「心臓の樹」(Heart Tree)、「神経の樹」(Nerve Tree)という言葉を使用して、神経血管系の道筋を説明しています。

頸部の施術をするときに

頸部の話しをするときに、ヘドレー先生はまず腕に注意を向けるように促されます。神経という「樹」の枝、血管という心臓の「樹」の枝は指先まで伸びています。腕には正中神経、尺骨神経、橈骨動脈と尺骨動脈が通っていますね。ビデオではこれらの神経血管がきれいに剖出されており、これを上(近位)にたどっていくことで、神経血管系がずっとつながっていることを肌で理解してもらえるようにしています。神経をさらにさかのぼって行くと、有名な腕神経叢に達します。

複雑な腕神経叢の名前を覚える必要は今はありません。心臓の「樹」と神経の「樹」が枝分かれする様子に気づき、どのような道筋をたどっているかを観察してください。

小胸筋の下、大胸筋の下、鎖骨の下を通っていますね。これらの神経血管の枝は頸部から枝分かれしています。つまり、あなた腕は首から始まっているのです。

神経の樹の大きな枝が頸椎からでています。その側には太い動脈と動脈が通っています。腕神経叢の束は前斜角筋と中斜角筋の間から出てきます。

前斜角筋の近くには頸静脈、迷走神経、頸動脈が通っています。すべて首の外側を通っていて、指先を当てれば簡単に感じることができます。

ボディワーカーの方はクライアントが「首が凝っている」と訴えると、「じゃあ首をほぐしましょう」と力を入れることはありませんか。その前に、これらの重要な神経や血管がそこを通っていることを意識し、配慮することが必要です。

筋膜は伸びるのでしょうか?

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Does Fascia Stretch?: Learn Integral Anatomy with Gil Hedley

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筋膜(ファシア)は伸びるかどうか。つまり筋膜をストレッチすることができるかどうかという議論があります。このレクチャーでは30年近く筋膜に重点を置いた解剖を行ってきたギル・ヘドレー先生が腸脛靱帯(ITバンド)の実際の映像を使って説明して下さいます。

Fasciaは日本語で筋膜と訳されているために、筋を取り巻く膜であるとの誤解がありますが、浅在筋膜(superficial fascia)は真皮の下側にある脂肪組織を含む疎性の結合組織を指します。ヘドレー先生の解剖ビデオ(無料:日本語字幕付き)を参照して下さい。誤解を避けるために「ファシア」という英語標記を主として使用します。

ファシアをストレッチすることができるという説も、ファシアをストレッチすることはできないという説もあり、どちらも自説を譲りません。

ファシアがストレッチするかどうかについて論ずる前に、ファシア(筋膜)とは何を指しているのか、ストレッチ(伸びる)とはどういう状態をさしているのかを考えてみましょう。

たとえば、コットン(綿)はストレッチするでしょうか。コットンの線維を1本手に取って引っ張ってもさほど伸びませんが、綿のTシャツは1本の繊維だけでできていいるわけではありません。

コラーゲン線維1本はファシアでしょうか。違いますね。ファシアは複数のコラーゲン線維と基質と細胞が組み合わさってできています。

私のシャツが綿の線維1本でできているのではなく、複数の綿の線維で織られてできているのと同じです。

綿の線維1本を引っ張ってもたいして伸びないかもしれませんが、綿のTシャツは引っ張るとかなり伸びますね。

それではファシア(筋膜)は伸びるのでしょうか?

ファシアがどのように伸びるかは、コラーゲン線維の「織り目」(weave)によります。また、引っ張る方向にも左右されます。

ギル・ヘドレー先生が「ペリファシア」(perifascia)と呼んでいる種類のファシアの線維はフエルト状の「織り目」で構成されおり、特定の方向に走っているのではないので、様々な方向に動くことができます。

ペリファシアとは周辺にあるファシアという意味で、体内で差動(隣合う構造がスライドするように動くこと)を可能にする接触面を構成する膜質のファシアです。ペリファシアについての詳細は別のレクチャーをごらん下さい。

日本語では筋周膜と呼ばれるものに当たると思います。隣接筋との間にある薄いフィルム状の層で、伸縮性があるため、筋は隣接する筋肉から独立して収縮することができます(differential movement)。滑性であるため、筋肉はスライドするように動きます。

ファシアの種類によってはよく伸びるものもあります。浅存筋膜(Superficial Fascia)/皮下筋膜はとてもよく伸びます。たとえば腕の皮下筋膜と真皮はつまみ上げることができますね。

深在筋膜(Deep Fascia)はどうでしょう。ディープファシアは密性結合組織の膜で、コラーゲン線維の密度が高く、規則正しく並んでいます。

最もよく知られているのが腸脛靱帯(ITバンド)ですね。これは太ももの外側にある分厚い筋膜で、長いコラーゲン線維が上下に走っています。横の方向にも線維は走っていますが、縦方向ほど密ではありません。このITバンドの「織り目」の上(浅)側と下(深)側には複数の線維束がさまさまな方向に走っています。

ITバンドは縦の方向に引っ張っても伸びません。筋肉を縦の方向に安定させているので、伸びたら大変なことになります。しかし、太ももの円周方向には伸びます。だから、大腿四頭筋が収縮して、盛り上がることができるのです。

縦の線維と線維の間の距離が広がることによって、横方向に伸びるのです。顕微鏡で拡大してもると、横のコラーゲン線維は直線ではなくアコーディオン状になっていることから、横方向に「伸びる」ことができるのです。

ギル・ヘドレー先生のビデオレクチャーの末尾には、実際のITバンドに負荷をかけて、線維の間隔が変わる様子を顕微鏡で撮影した画像が掲載されています。

大腰筋の上にある構造

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Structures Overlying the Psoas Major m.: Learn Integral Anatomy with Gil Hedley

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マニュアルセラピストにとって大事なレッスンです。腰痛の原因としてよく指摘される大腰筋ですが、大腰筋がまな板の上にのっていて、さあ揉んでくれ!と言っているかのように、いきなりクライアントの腹部に手を押し入れ施術を始めるセラピストが少なくありません。腹部はデリケートなので、これを不快にに感じるクライアントもいるかと思います。

Psoas Major Muscle
大腰筋 (Creative Commons/Author: Anatomography)

ちょっと待って下さい。あなたの手と大腰筋の間にある複雑な構造を認識していますか?

さて、大腰筋はどこにあるのでしょう。大腰筋はインナーマッスルです。股関節を屈曲(曲げる)筋肉なので、遠位で大腿骨の小転子に付いており、そこから骨盤の縁を越えて、上に向かいます。骨盤を超えるあたりでは比較的細い筋肉ですが、筋腹は広くなります。腰椎の横突起にむかって走り、横突起と腰椎椎体の側面につきます。横突起と椎体、横突起と椎体、という風に順番について、結果として長い筋肉の束となります。近位(上の方)から見れば、下走して、腸骨筋の上を通って、最終的に腸骨筋と合体し、小転子で停止します。

「だからどうした?」と思われるかもしれませんが、話しはこれからです。まず、肝臓があります。尿管が肝臓から伸びて大腰筋の筋腹の上を通って、骨盤深部にある膀胱に向かいます。つまり、尿管は大腰筋の上を横切っているのです。

出所:Anatomist90, CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

他に何があるでしょう?重要な血管が大腰筋の上を通っています。大動脈と大静脈です。大動脈と大静脈は隣合わせになっています。大動脈と大動脈から、卵巣静脈(女性)、精巣静脈(男性)、卵巣動脈(女性)、精巣動脈(男性)が出ています。これらは静脈と動脈から分岐し、大腰筋の上を通って尿管と交差し、卵巣や精巣に向かいます。

動脈と静脈の走行は左右で少し異なりますが、基本的には左右両側で同じことがおこっています。

Colon Illustration

図出所:https://www.cdc.gov/cancer/colorectal/basic_info/what-is-colorectal-cancer.htm

これだけではありません。S字結腸が大腰筋の上でSカーブを描きます。位置によりますが盲腸が大腰筋の上にのっていることもあります。

女性の場合、卵巣が大腰筋の真上にのっている可能性もあります。

今度、クライアントの大腰筋をマッサージするとには、あなたの手が探っている下に何があるかをよく思い浮かべて、そこにある構造を尊重しながら施術にあたって下さい。

心臓と肺の親密な関係

Gil Hedley博士のYoutubeレクチャーシリーズ(閲覧無料)

Lung-Heart-Lung Friendship: Learn Integral Anatomy with Gil Hedley

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インテグラル・アナトミーの解剖実習では、しばしば心臓と肺はそのつながりを維持したまま、いっしょに剖出されます。Gil Hedley先生は内臓についてのプチ・レクチャービデオで心臓と肺を1セットとして説明しています。

ふつう心臓と肺はテキストでは別の章で扱われていますし、病院だったら心臓と肺は別の棟で扱われます。しかし、組織間の関係性を中心に据えるインテグラル・アナトミーでは心臓と肺は美しくドラマチックな1セットの臓器としてとらえています。

心臓は私たちの胸の中にある美しい天使であり、肺はその翼です。肺は膨らみ、心臓という天使はその翼を広げます。血液は絶え間なく全身を巡り、心臓から肺へ、肺から心臓へと巡っています。

心臓と肺、それは体の中心にあり、そこで血液の流れは勢いを取り戻し、栄養分と酸素で満たされた血液は命の息吹で満たされるのです。

肺というと私たちは空気の話しだと考えがちです。息を吸うと体に大気が流れ込みますね。しかし酸素と二酸化炭素は血液を介して受け渡されるのです。

微細な毛細血管が肺胞を取り囲み、その境界面で酸素と二酸化炭素が受け渡されるのです。肺について語る場合、空気だけでなく血液についても語る必要があることを理解していただきたいのです。

肺は心臓の翼です。無数の静脈と毛細血管が肺に浸潤し、肺胞を包み込み、酸素と二酸化炭素の交換を可能にしているのです。

肺はまた心臓をマッサージしています。息を吸うたびに肺が膨らみ、心臓は肺にやさしく押され、心地よいプチマッサージを一日中受けているのです。

心臓そのものも、常にとてもダイナミックなリズムで鼓動しています。常に同じ単調なリズムのダンスを繰り返しているのではありません。心臓はわたしたちの胸の中でリズミカルに踊っているのです。

そして心臓の渦動性の収縮により、血液は高速で回転し、力強い渦流となって栄養素と酸素を運び、生命の息吹を私たちの胸から全身に運ぶのです。

病院の診察室の壁に貼られているのを見かけるイラストでは心臓は「ポンプ」として描かれていますが、実際のところ心臓はポンプのように働くわけではありません。渦を巻きながら押し出される血液は全身を駆け巡った後、圧力差により末梢血管からゆっくりと、ゆるやかに流れる川のように心臓に戻り、再び回転し、勢いを取り戻して再び全身に滋養を運ぶミッションに旅立つのです。血液は命の恵みを運びます。

さて、心臓と肺は胸の中にあります。胸部というと、肺は胸郭の肋骨縁に沿っていると考えがちですが、実は体の前面では腹部の臓器がかなり上まできているので、肺は肋骨の下縁まできているわけではありません。外側面は肋骨に面して胸郭を満たしています。

肺の上端の肺尖はずっと上の方にあり、鎖骨よりも少し上方に達しますので、手を首の下の方に当てて息を吸うと、肺が膨らんで鎖骨よりも上まで満たすのを感じることができます。

次に右手を胸骨の真上において、そこから少し左にずらすと、心臓はまさにあなたの掌の下にあります。ほぼこぶし大といわれますが、世の中に大きい人と小さい人がいるように、こぶしより大きいこともあれば小さいこともあります。

自分の心臓の位置を知り、こぶしをつくって胸に当て、これが心臓だと想像することと、実際に心臓のある場所に意識を向けて、心臓の動きを感じることは別物です。

静かに、じっとして、背筋を真っ直ぐにして坐骨上でバランスを取って座っていると、鼓動が全身に伝わり、内側からあなたを揺り動かすのを感じることができます。リラックスして、バランスを保てば、心臓の鼓動は力強い波を生み、そのリズムが全身に広がるでしょう。

心動があなたを動かし、心臓に動かされるのを体感すること、それは美しいメディテーションです。

心臓と肺は私たちの胸の中で手に手を取り合って生きています。しかし、ほとんどの人が気づかないのは下半身からの血液をすべて心臓に注ぎ込む下大動脈が肝臓の裏を通っていることです。心臓と肝臓の間を隔てているのは横隔膜だけです。肝臓は肺が拡張すると下に押されます。心臓の鼓動は肝臓にも伝わっています。

心臓と肺はそれだけで孤独に存在しているのではなく、他の内臓も心臓の動きを感じています。横隔膜のすぐ下には肝臓と胃があります。肝臓は中味がつまっています。胃は中空です。異なるタイプのドラムのようなものだと考えると、心臓はこれらのドラムを打ち、周囲の内臓とコミュニケーションを取っていると言えます。心臓はソロではなく、バンド演奏をしているのです。そして心臓の奏でる音楽に他の内臓が耳を傾けるのです。

これらの内臓はお互いに非常に近い位置にあるので、いちいち脳に問い合わせて、「今心臓は何をしているの」と訊く必要はありません。常に心臓の鼓動を直に感じているからです。

あなたの胸の中に住む心臓と肺の天使の歌に耳を傾けて下さい。全身に命を吹き込んでくれます。